« 冗談音楽 | Main | 『TOKYO MUSIC JOY 88』 »

September 29, 2004

ほおずき(酸漿)

hz2.jpg

鬼灯とも書かれることが多い。ナス科の多年草で「かぐ」に包まれた赤く丸い実をつける。東京では浅草で開かれるほおずき市でも有名な植物だ。

小さい頃、初孫だった私は田舎の祖母の寵愛をうけて育った。元学校の教師で自らもたくさんの仙人掌を育てていた祖母は植物の名前に詳しく、一緒に散歩に行くたびに色々な木や草や花の名前を教えてくれた。

そうした野の植物も、祖母の手にかかればいろいろなものに変化する。少し褪せた朱色のほおずきを手にとると、シワだらけの手で「かぐ」をむいて羽根つきの羽根のような形にする。それを頭に見立てて千代紙で胴を作り人形を作ったりもしてくれた。

祖母が好きだったのは、ほおずきの実だけにして口に入れて食むようにすることだった。すると、

   きゅむ

      きゅむ

と小さな音をたてるのだ。不思議な音だった。繊細でつややかで、どこから響いているのかわからない。子供にとっては魔法の音だった。

「ぼくにもやらせて!」

せがむようにして真似をしてみたのだが、私のほおずきはいつまでも沈黙を守ったままだった。食むようにしても、いじわるなほおずきは口の中でころころとからかうようにまろぶだけ。半ば泣きそうになった私の頭を、先ほどほおすきをむいた祖母の手がやさしく撫でてくれた。やわらかい風が頬を撫で、秋が近いことを告げていた。

泉鏡花の原作を元に鈴木清順がメガホンをとった映画『陽炎座』ではほおずきが重要な役割をもつ。ここではほおずきが「女のたましい」として描かれている。朱色のほおずきが女性の口の中におさまり、きゅむきゅむと小さな音をたてるくだりは他に比するものがない艶やかさがある。

陽がほんの少しやさしくなった頃、未だに鳴らすことのできないほおずきの音が頭の隅でそっと鳴り、夏が終わる。天国の祖母は口の中でほおずきを食みながら、きゅむきゅむと音を出しているだろうか。


|

« 冗談音楽 | Main | 『TOKYO MUSIC JOY 88』 »

Comments

ほおずきはテドはいまだに鳴らす事ができません。
これは、ちかくにおばあちゃんがいなかったし、
母親も教え方がへただった為だと人のせいにしてます。(笑)

昨日、ピーマンのでかい版のパプリカのオレンジ色を
丸焼きをしようとコンロで焦がしながら焼いていたら
ほおずきと同じにおいがして、懐かしかったです。

ほおずきって食べれませんよね?
種、酸っぱいですね

Posted by: テド | September 30, 2004 at 03:36

>テドさま

コメント、ありがとうございます。正直書きながら、「ほおずき鳴らすのって、今知ってる人少ないんじゃないかな」と思ってました。あれ、すごくコツがいるみたいですね。鳴らせないって人はいっぱい知ってます(^^;。

パプリカはそういう匂いかもしれませんね。バーベキューだったんですか?私、肉ください(笑)。

ほおずきは食べちゃだめだと教えられました。味が味ですけど、教えられないと野生児だったんで平気で道の草、食ってましたから(^^;。今はなんか品種が改良されて食用のがでてるとかでてないとか。チェリー・トマトと間違えられないようにしないと。

Posted by: サンタパパ | September 30, 2004 at 23:02

きれいなほおずきのお写真、
最初見たとき胸がきゅっとなりました。

わたしもね、おばあちゃんによく鳴らしてもらってました。
ずいぶん長いこと、あの音を聞いていないなぁ。

春はタンポポで髪飾りを作り
かわらのよもぎで、お餅を作ってもらった。

秋はすすきの穂でほうきを作って遊び、
お月見団子をおなかいっぱい食べて…

思い出はいまもぜーんぶ わたしだけのもの(ノ´∀`*)

Posted by: あゆゆ | October 07, 2004 at 02:20

>あゆゆさま

四季の自然に囲まれて、いい幼少期をすごされましたね^^。そういうのは一生の財産だと思います。
ほおずきを鳴らすのは、だんだん伝統芸能みたいにすたれていくんでしょうかねえ。情緒のある音なんですけど。

Posted by: サンタパパ | October 07, 2004 at 22:42

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/53033/1552531

Listed below are links to weblogs that reference ほおずき(酸漿):

» 陽炎座 [かたすみの映画小屋]
○△□ 幽玄の世界というものに漠然と憧れがありまして、「雨月物語」や小泉八雲、泉鏡花などを読んでいた頃がありました。『ツィゴイネルワイゼン』を見た友人... [Read More]

Tracked on October 17, 2004 at 03:15

« 冗談音楽 | Main | 『TOKYO MUSIC JOY 88』 »