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October 13, 2004

いにしえの物売りの声(前)

まだテレビが世間にそんなに普及していない頃、子供が手軽に楽しめるビジュアル・ストーリーのひとつは紙芝居だった。自転車の荷台に紙芝居の額をセットして、拍子木を叩いてお話が始まる。飴を買わない子は見ることが出来なかったので、指をくわえて遠巻きに横を通り過ぎるだけだったが、拍子木の音に密かに心が躍ったものだった。

1960年代の昔には夕方になると鳴り響いていたのが、豆腐屋のラッパである。ご存知のとおり、豆腐はアシが早く保存が効かないので、夕餉までには作った豆腐を売り切ってしまわなければならない。店でお客さんを待ってるよりはということで、街に繰り出すことになる。

真鍮のラッパに傾いた陽が鈍く映える。「ぱぁ~~、ぷぅ~~」という音が「とぉ~~、ふぅ~~」と聴こえるかのように鳴ると、それを待っていたかのようにアルミのボウルを持った街の住人たちが三々五々と集まってくる。

かつてそのラッパは宮本ラッパと呼ばれ、足立区の宮本喇叭製作所で作られていたらしい。今となってはスーパーマーケットが進出して、冷蔵庫や保存方法も発達してきたのでほとんど豆腐屋のラッパを聴くことはなくなっている。

夜になると遠くから夜泣きそばのチャルメラの音がする。屋台のラーメン屋が近づいて来ている証拠だ。「ピロピ~~ロロ、ピロピロロピ~~~」という節回しが特徴的で、小学校の頃はよくリコーダーで真似したものだった。

チャルメラというのはポルトガル語の葦を意味するラテン語"calamus"からきた"charamela"という楽器の名前からきたとのことで、16世紀の末に伝わってきてる。この"charamela"が発達して今のオーケストラでも使われるオーボエになったそうだ。そして、この笛自体は明治時代には飴売りが使っていたらしく、石川啄木は「飴売のチャルメラ聴けば うしなひし をさなき心ひろへるごとし」と詠んでいる。そして関東大震災の後にラーメンの屋台が増えて、チャルメラを使うようになったということだそうである。

思いの外長くなってしまったので、続きはまた明日。

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Tracked on October 13, 2004 at 23:08

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