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February 01, 2005

『電子楽器産業論』

一見ビジネス書、もしくは経済論の書物に見える田中健次の『電子楽器産業論』(弘文々堂)だが、なかなかに音楽についても考えさせられる本であった。

元は大阪大学文学部に提出した学位論文だったそうだが、多くのバックデータと緻密な取材を元に、音楽と技術を主眼に持った考察を加えていて非常に興味深い。

内容は以下の7章からなる。

第1章 日本楽器産業前史
第2章 電子楽器の原理と歴史
第3章 電子楽器産業・新時代
第4章 熾烈なマーケティングへの発進
第5章 数値が示す日本洋楽器産業の構造変化
第6章 新楽器群のその後
第7章 産業構造変革の要因
第8章 これからの楽器産業と電子楽器

「日本楽器産業前史」では明治以降、洋楽器が国策も交えて作られるようになっていく経緯を示している。世界に類を見ない生産規模をもつヤマハの誕生と成長にも触れている。全体のテーマにもなっているが、日本人と楽器、特にピアノとのかかわり方についてここでも言及されている。

「電子楽器の原理と歴史」は、おなじみ電子楽器の歴史についてかいつまんで述べている。このあたりは、楽器そのものの写真や機能についてはあまり触れていない上にさらっと流しているので、本の題名を見てこのあたりに期待するのであればがっかりするかもしれない。

圧巻だったのが、「電子楽器産業・新時代」から「熾烈なマーケティングへの発進」の部分で、1980年頃のカシオとヤマハの電子キーボードによる市場での戦いが述べられていて、非常に読み応えがある。まさに技術と営業をフルに使った戦争と言ってもよい。

後半では時代による売れ行きなどの推移を挙げていく事によって、これからの楽器のあり方などについて述べられている。1998年に出た本なので統計については少し古い数字になるが、その点は論点にはあまりかかわらないので問題ない。

電子ピアノであってもなぜタッチ・レスポンスが重くなくてはならないのか、しいてはピアノが日本人にとって本当に楽器なのかなどと考えるきっかけにもなる本であった。


電子楽器産業論
電子楽器産業論


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