« 2005. 1 INDEX | Main | 休みはとっても大事 »

February 03, 2005

楽譜の情報量

『電子楽器産業論』の中にあった話で興味深かったことのひとつ。

カシオがバーコード読取によって曲を読み込めるCT-701を開発した時に、ソフトウェアとしてのバーコード方式による電子楽譜の製作が急務であったとのことだ。ハードウェアとしてのバーコードー方式の電子楽器があってもソフトウェアがなければ話にならない。ところがその開発の時に楽譜入力担当者が直面した思わぬ壁があったそうだ。

まったく譜面通りに入力をしたはずのに、バーコードで読み込んで自動演奏させてみるとどうも元になる曲と同じに聴こえなかったのだ。理由は明白であった。完全に譜面通りに打ち込んだとしても、譜面に現れないいろいろな細かいアーティキュレーションが一切情報として盛り込まれていなかったのだ。

譜面というのは音楽の伝達手段としての一種の共通言語といえる。例えば、我々の周りで一般的によく使われる西洋音楽を基本にした五線譜もそうであるし、ギターやベース初心者用のTAB譜、邦楽の楽譜やミュージック・コンクレートなどの譜面など、いろんなローカル・ルールはあるものの、時間を越えて他人に伝えるための手段の一つであることは間違いない。これまでの歴史の中での過去の楽曲を楽しむことができるのも、この楽譜のおかげが大きい。

ただし言語でもなんでもそうだが、記号に変換されたものがすべてを伝えることは不可能だ。五線譜にしたって伝えるものとしてはかなりの情報量が欠落している。逆にそれを補うために楽譜以前の共通認識を持つなり、自己の中で補間するなりしないと極端な劣化コピーにもなりかねない。

以前にシンセサイザー・クロニクルの最後にも少し触れたが、打ち込みにしても歌にしてもピアノを弾くにしてもこの作業なしに「音楽」として「楽しめる音」を作るのは難しいと思うのだが、気づかないうちには結構おろそかにされやすい。

例えば打ち込みドラム・パターンひとつにしても、1小節の中のビートの強い部分と弱い部分がある訳だし、1曲の中でも静かにするべき部分もあれば盛り上がる部分もある。何をどう伝えようかということを試みてフィードバックしながら作り上げていけば、おのずからやり方がだんだんわかってくると思う。

もちろん言語と似たようにまず正確な発音ができるように訓練するのがまず大事なことだし、そのうち語彙力を増やしていろんな表現をできるようになることも必要だろう。またいろんな工夫をしてみることも身になると思う。まだ昔、リズムマシーン黎明期のRoland TR-606みたいに1拍が4分割しか扱えずアクセントが強弱2通りで楽器全体にかかるような機械を使っていた時にも、曲によってはアクセントつまみを手で動かしてサビの箇所を強くしたり、後半のテンポをごく微妙に手動で早くしたりしていた。伝えたい思いを託するのだから、工夫はないなりにやってみると思わぬアイディアも出てきたりすることもある。


|

« 2005. 1 INDEX | Main | 休みはとっても大事 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/53033/2796989

Listed below are links to weblogs that reference 楽譜の情報量:

» プロトコルとしての楽譜と曲のアイデンティティについて [マイナーセブンス ~ ピアノと音楽と旅と。。。]
「だがっき」と「おと」の庵 に楽譜に関しての興味深い話がありましたのでトラックバ... [Read More]

Tracked on February 04, 2005 at 00:28

« 2005. 1 INDEX | Main | 休みはとっても大事 »