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February 08, 2005

耳から官能

以下は当blogにおいて初のR指定のエントリーなので(笑)、画一的な性別役割規範や価値観・審美観にもとづく断定的な表現があり、特定の人々を不快にさせる恐れのある文章が含まれている可能性がある。15歳以下の方は直ちに閲覧をやめ、その他の方は自己責任で閲覧するように願いたい(笑)。

と書くとたいそうなことを書いているのではないかと驚いて(期待して?)覗かれると思うが、全然たいしたことを書いている訳ではないので、身構えた方々におきましては大変に申し訳ない。実は一度書いてみたかっただけである。

人間の場合には、性行為とそれに付随するものは必ずしも繁殖を意味するものではない。その歴史と文化の中で性行為に付随する快感のみを取り出すことにも目を向けて、独自の文化を作り上げて発達させたりしている。その中の一つが例えば今現在流通しているアダルト・ビデオなんかの存在だったりする。

ちなみにAVといえば「Adult Video」を一般的に指すようになったのは素直に悲しい。昔は「Audio Visual」の方が一般的であったはずだ。もっとも、それ以前には稲垣足穂が「A感覚とV感覚」という文章を記したこともあるが(笑)。

余談だが、昔ヤマハがポピュラー・ソング・コンテスト(通称:POPCON)というオーディンションをやっていた頃の話。友人が作った曲のバンドで九州大会にまで進んだことがあるのだが、その際にはヤハマもちでホテルに泊まることができる。そして、ホテルには有料チャンネルというものがあったりした。なにせこちらが学生なので見たいけれども金はなし。その頃の有料チャンネルはアンテナとテレビの途中に料金箱があってそれで遮断されている形式だった。そこでギターのヤツから細い弦をもらってアンテナからTVの端子に直接つなぐと、なんと見ることができたというのは秘密だ(笑)。もう時効だし今は形式が違うみたいだから書いちゃうが、よいこはやってはいけないぞ。

人間の五感である視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のうち、視覚と聴覚を刺激するビデオというメディアはより直感的に具象性を伴った道具として存在する。かつてあったブルー・フィルムというメディアの発展系で、より取扱いが楽に、またプライベートに対応したメディアとなっている。それまでに物語性を持った他のメディアとしては、小説によるもの、写真や絵によるもの、レコードやテープを使った音によるものがあるのだが、それぞれに視覚、もしくは聴覚のみに限定されているものであるから、かえって想像力の働く部分が広く充分に使用目的に耐えうる場合も多い。

例えば『官能小説用語表現辞典』(永田守弘編/マガジンハウス)という本があるが、これは最近の数年間の小説の中から、官能小説ならではと思われる性的表現の言葉を2293語とりあげて、五十音順に掲載したという代物。なるほど各作家が読者の想像を喚起せんとありとあらゆる知恵を絞って表現の限りを尽くしていることがわかってなかなか興味深い。オノマトペとかは結構笑えるものがあったりもするが(笑)。

音というものについても所謂艶笑落語といった物語の耳版できわめて間接的なものもあるが、ここで取り上げるのは「ムード歌謡」という極めて異質な音楽ジャンルである。1960~70年代の歌謡曲全盛期にはこのような謎のジャンルの音楽が存在していた。以前にムード歌謡を拾遺したものがボックスセットで出ていたが、それを編集したものが
『魅惑のムード☆秘宝館』というタイトル出ている。

このムード歌謡には定型文法が存在していて、

・女性歌手による甘い吐息
・想像を喚起させる歌詞
・スローからミドル・テンポの曲
・全体にかなり多めにかかるリバーブ
・ブレス音の大きいテナー・サックスによるメロディ(←かなり重要)

といったところが大きなポイントと言えるのではなかろうか。

このムード歌謡もどうやら時代のあだ花であったようで、現在はほとんど死滅していると言って過言ではないだろう。

さて目を海外に向けると同じようなジャンルについてはあまり耳にしないが、同じような曲については存在する。日本の海外ポピュラー史において非常に有名なのが、BB(ベベ)ことブリジット・バルドーによる「ジュ・テーム」であろう。家庭団欒の時にラジオから流れてくると、誰一人何も悪いことはしていないのに一種独特の気まずい雰囲気になり、母親は洗い物に立って父親は唐突に「そういえば宿題、やったか?」とか聞いてくるシチュエーションにでくわした方もおられるのではなかろうか?

時代によってはこれがドナ・サマーの「Love To Love You Baby(愛の誘惑)」だったり(リンク先の「私の母はこのシングル盤を私が学校に行っているスキに持ち出して風呂のかまどで焼いてくれました」という言葉が笑えると同時に涙を誘う)、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの「KISS KISS KISS」(個人的には勘弁してほしい)だったりする人もいるだろう。

前出の「ジュ・テーム」を含めた海外オムニバス版も『エロスの花道~ジュ・テームだよ!全員集合!!』というCDで発売されている。こちらはいろんなジャンルの音楽が入っていて、日本と海外との感覚の差と言うものが判って興味深いし、結構笑える(笑)。もちろん、ムード歌謡も大変時代を感じてある意味すごく笑えるが。

そういえば、サンプリング・シンセサイザーを買った男性のうち何割かは、一度はビデオなどから妖しい声をサンプリングしてみるものだとも聞く(笑)。

しかしこのような文章、このハンドル・ネームでは非常に書きづらい話題ではある(苦笑)。おまけにコメントがつけづらい話題でもあるし(笑)。


魅惑のムード☆秘宝館
魅惑のムード☆秘宝館

エロスの花道~ジュ・テームだよ!全員集合!!
エロスの花道~ジュ・テームだよ!全員集合!!


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Comments

ムード歌謡といえばまっさきに
「みなーとよこーはま~」を思い出します。
ドゥドゥビドゥビドゥビドゥワドゥワ~
ってやつです。思い出せないーーーー!
『官能小説用語表現辞典』面白そう!
オノマトペってぜんぜんわかりませんが。

Posted by: めけ。 | February 09, 2005 at 11:49

意地でもコメントつけよう。でも何を?ああ、私っなにやってんだか。


おりがみは、数人の男の人がわわわわーとコーラスして、前で一人がリードボーカルするのが「ムード通う」かと思っていました。ロマンチカとか、クールファイブ、ロスプリモス、マヒナスターズとか。
めけさんのは「いせざきちょうぶるーす」。商店街の歌碑の前にたつと、あの官能のため息がきけるはず。です。

Posted by: おりがみ | February 09, 2005 at 13:10

自分の声フェチについてはずっと考えてるんですが、実際、女性は聴覚刺激に性的興奮を覚えるというデータがあるそうです。

そんで前から思ってたんですが、
オペラの女性ソプラノのハイトーンの声、ハイCだっけAだっけ。あれ、間違いなく「あの時の」声ですよねえ。

んで、アルトの囁き声好き文化と高い囀り声好き文化(→中国にその傾向があると思う)のこととかも考えたりします。

Posted by: acoyo | February 09, 2005 at 19:23

>めけ。さま

その曲については、おりがみさまが答えてくださってます。感謝>おりがみさま。なにげに名曲ですよね。

『官能小説用語表現辞典』面白いっすよ。感心するし、結構笑えもします(笑)。オノマトペって擬音のことです。「ちゅど~~ん!!」とか「BOMB!!」っていうものですね。で、あれについてはいろんな擬音を考えつくものだなあと(笑)。

Posted by: サンタパパ | February 09, 2005 at 23:35

>おりがみさま

なにげにチャンレンジャーですな(笑)。
おりがみさまのおっしゃるとおり、それもムード歌謡、ム-ド・コーラスですよね。言われてみれば確かにそうです。逆にあの手の曲はなんと総称してらいいのか分からなくなったので、ちょっとまた調べます。
「伊勢崎町ブルース」は歌碑があるんですか。さすが大ヒット曲。でも商店街でエンドレスでかかってる曲が「ちゃらっちゃ、ちゃららら~らら、あっ、あっ」ってのも(苦笑)。

Posted by: サンタパパ | February 09, 2005 at 23:39

>acoyoさま

ソプラノは普通は上はCあたりから音によってはFまで出るとか言われてるみたいですね。今度その手のビデオを見ながらキーボーででキーをとってみようかと思いましたが、客観的にマヌケっぽいので躊躇してます(笑)。
私の場合、声はすごく重要で大事な要素ですね(^^;。
今は亡き妻は私について「顔とスタイルは全然だめだけど、渋い時の声がステキ」と言ってました。全然だめなんかい(^^;>顔とスタイル。
香港映画と見てると女性の笑い声が甲高いですよね。特に悪役とか(笑)。あれもまた歴史や文化がありそうですね。

Posted by: サンタパパ | February 09, 2005 at 23:48

エレクトロ・ポップバンド、ベルリンにも、その類の曲ありました。
ブロンディのデボラ・ハリーも、艶やかで・・。

Posted by: yoyogi39 | February 10, 2005 at 05:38

>yoyogi39さま
ベルリン!ブロンディ!なつかしい名前です。
結構曲は聞いているんですけど、題名やアーティストを思い出さないもののあるんですよ。特に最近は記憶力の減退が(^^;。

Posted by: サンタパパ | February 10, 2005 at 23:50

私の通った中学校には「AV室」というのがありました。「視聴覚室」のことです。「AV準備室」というのもありました。それはビデオの編集をしたりする部屋でした。

「秘宝館」のカスタマーレビューがドイツ在住日本人だったり、日本の歌謡曲マニアと思われる韓国人からのものだったので、受けました。
「ジュテーム」はジェーン・バーキン版しか聴いた事がありません。個人的にニコ、フランソワーズ・アルディも良い声、歌い方だと思います。

Posted by: kawahara | February 11, 2005 at 21:36

>kawaharaさま
どうも、おひさしぶりです。コメント、ありがとうございます。
たしかにAVについては今はいちいち説明しないと(笑)。
あのドイツでは高評価を受けているというくだりは私もウケました(笑)。
ニコ、フランソワーズ・アルディというのも懐かしい名前ですね。ニコといえばドアーズの「The End」をオルガンをバック歌った鬼気迫る歌が頭から離れないのですけど。

Posted by: サンタパパ | February 11, 2005 at 23:36

その手のビデオで音を取ってみたところ、Aあたりの音でした(笑)以外に低かったですね…(たまたまでしょうけども)。サッカーの「ゴ~~ル」は、Bからゆるやかに音程が下がっていき、半音ぐらい下がります。いや、どうでもいい話なんですけど…スイマセン。

Posted by: belltone | February 13, 2005 at 01:09

>belltoneさま
Aは女声では出しやすい音程らしいです(^^;。状況にもよりそうですね(笑)。
こういう話、好きですよ。どんどん書いてください。

Posted by: サンタパパ | February 13, 2005 at 23:28

ムード歌謡で海外のものというと、「パローレ・パローレ…」でおなじみの『甘い囁き』でしょうか。たしかゲンズブールでしたか。
日本語版では細川俊之が歌ってというか語ってましたな。バッチリな人選に感心です。

「ムード歌謡」というアバウトな名称なだけに定義づけは難しいと思いますが、テナーサックスは入っていてほしいですね。
ぼく的には「ナイトクラブでかかってたり歌われたりして似合う曲」は全部ムード歌謡でいいと思います(乱暴)。


それで思い出しました。
数年前、ヒット曲をオルゴールにしてCD化するのが流行りましたが、昔はヒット曲をムード歌謡化してましたな。要するに「歌のない歌謡曲」というやつですが。
ぼくは目下そのレコードを集めてます。ライバルのいないジャンルなので、安いうえにサクサク集まりますな(笑)
ジャケットがたいがい裸の外人女性で、演奏には無論テナーサックスが挿入されてます。
夜中に聴いたりすると、なかなかいいですよ。


最後に、AV雑誌にAVレビューを書く都合上、『官能小説用語表現辞典』に似た本は持ってます(笑)

Posted by: 猫パンチ | February 17, 2005 at 00:21

>猫パンチさま
その筋の師匠にお出ましいただきまいて狂喜しております。ありがとうございます。
「Parole Parole~」は見た途端、頭をぐるぐる回って離れません(笑)。流行りましたね。細川俊之は知りませんでした。やるなあ(笑)。
テナーサックス、それも「むせび泣くテナーサックス」が必須ですね。
「歌うヘッドライト」じゃなかった、「歌のない歌謡曲」を集めているんですか。なかなか面白いかも。で、クドく時に使うのでしょうか?(^^;
現代はMIDIで打ち込んだものが、よく松屋(笑)とかで流れてますが、あれよく聴きこむと、単価が安い仕事なのに結構気合入れて細かい打ち込みしてる人、いるんですよね。あのあたりは職人根性を感じます。
『官能小説用語表現辞典』の類がまだあるんですね。非常に興味をそそります。余談ながら、ウブな頃は百科事典の特定の単語だけで非常に恥ずかしい気分に浸れたものです(^^;(遠い目)。

Posted by: サンタパパ | February 18, 2005 at 00:15

その筋(笑)

細川俊之のソレは、シングルレコードで持ってますので、パッと頭に浮かびました。

歌のない歌謡曲は、口説くときにかけると、あからさますぎてかえって引かれたり吹き出されたりしますな。そういうときのBGMって決めてませんねー。
そういえばサブリミナル系のCDで、「エッチな気分になる」というのがありました。←持ってません、念のため(笑)

ぼくの持ってる用語辞典は、ムック系のもっとライトなやつです。
百科事典はぼくもやってました。
国語辞典とか英和辞典、家庭の医学、あと変わったところでは家庭の法律事典というのでも想像をたくましくしたおぼえがあります。強姦の事例というのが載ってたんですな。
よせばいいのに挿絵まで付いていて………ええとすいません、このコメント、まずかったら遠慮なく削除してください(笑)

Posted by: 猫パンチ | February 18, 2005 at 17:52

>猫パンチさま
実際問題、クドく時のBGMってTPOや相手によるので難しいですよね。
昔、今で言うところのファッション・ホテル(爆笑)に行った時に、有線が入っていたので2人でいろいろチャンネルを選んで遊びました。ここのblogの本来(?)のテーマにふさわしい、効果音とかいっぱいあるんですな。それで、一番ウケたのが「よく眠れるチャンネル」。選んだら、「弁証法がうんてらかんてら」とか喋っていて、なりほど、これは私はよく眠れます(^^;。爆笑して本来の目的を果たすに至りませんでした。だめじゃん(^^;;;;;。
サブリミナル系の「エッチな気分になる」ってどんなんでしょうね?逆回転とかハーモナイザーでプッチを上げたりとかした音が入ってるとか?(^^;
「家庭の法律事典」とは意外な着眼点でした。改めて師匠とよばせてください。

Posted by: サンタパパ | February 18, 2005 at 23:48

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